算数アレルギー

算数の家庭教師、個別指導というと、中学受験の為と思われる方が大半だと思われますが、逆に、1対1だからこそ、本当に算数学習に困って、あるいは、特別のニーズでの相談をいただくことがあります。

かつて、小6になったばかりのお子さんについて、あるお母さまからご相談を受けたことがあります。
「この子は中学受験はしません。
ですが、なかなか学校での算数の成績が伸びず、このまま中学に進んでも数学で苦労するのではないかと思い、心配でなりません。
ですから、今から高校受験の準備を始めてもらえませんでしょうか。」
それが相談内容でした。

学校で使っている教科書の準拠問題集を進めていきました。
ところが、始めてみてすぐに感じたのは、「この子は決して算数が苦手なわけではないな」ということでした。
各設問の内容もしっかり理解し、ポイントを説明すると、しっかりと解けます。
学校の授業や教科書の内容が、あまりにもゆっくり過ぎて、彼には興味を呼ぶものではなかったのかもしれません。
それが、算数は面白くないということにつながってしまって学習に力が入らなくなってしまったようでした。
ですから、私の授業では、準拠問題集は早々に切り上げ、高校受験用、というより、中学学習、つまり数学の問題集の演習に入りました。
当時、名門私立中学に通うお子さんのフォローもしていたので、思い切って、その学校で副教材として使っている問題集をやっていくことにしました。
するとどんどん進むのです。
彼は、自分の頭を使う場を与えられていなかったのではないでしょうか。
小学校の先生は、先生として熱心にカリキュラムに沿った指導をしていたのだと思いますが、彼にはそれがまどろっこしくてつまらないものに思えていたようです。
算数は退屈、俺には合っていない、だから勉強もしない。そして成績も上がらない。
そんな状態で5年生を終えていたのでしょう。
中1用の問題集は小6の半ばから始め、実際に中1になってからは、秋には全部終わりました。
彼も自信がついたのか、それを機に、私のところは卒業し、自分での学習を始めるということになりました。

もしあのまま中学生になっていたら、算数の成績は伸びず、苦手意識だけを持って中学に進学し、きっと数学への興味を持てなかったろうと思います。
それにしても、数学の学習ぶりについて言えば、名門私立中学に実際に通っていた生徒より、地元の公立中学に進んだ彼の方がまさっていました。不思議なものです。



帰国生受験の体験記。(その3)完結編

前の記事の続きです。
通っていた四谷大塚についての感想が述べられています。

以下、体験記の本文です。



今思えば幾つもの課題をクリアしてたどり着いた合格だと思います。

一つは塾です。
「温情で入塾させる」と言われたときには正直、複雑な心境でしたが、四谷大塚はとても良い塾でした。SAPIXのレベルの高さをよく耳にしますが、指導が厳しく偏差値の高い生徒が多い塾がすべての子供に最適な塾ではありません。保護者説明会の時に四谷大塚の講師の先生が話される内容は共感するものばかりで、頑張っているが成績が伸び悩んでいる生徒に対しての思い入れが強い塾だと思いました。
教材の内容もしっかりしているので、長期的な学習計画は信頼できる塾の教材に則って進めるのが一番安心なのではないかと思います。

二つ目は家族の思いの強さです。「結局は本人のやる気次第」と言うのはよく聞くセリフですが、最近の受験は出題傾向の情報分析や、子供が学力をつけるための学習方法など、精神論よりも技術論が重要になってきているため、本人の努力だけで合格できるのは本当に一部の意識の高いお子さんだけだと思います。
子供にあった塾を選び、久保田先生を探し出し、プリントのコピーや書類のファイリングなど、実務的に行ったことは膨大でした(ほぼ全て妻がやりましたが。)。
また精神面でも、長女が学力的、体力的、精神的にどんな状況なのか、精神的なサポートは何ができるのかを、親はいつも考えていたと思います。これは仕事や他の家族を犠牲にして受験を優先するということではなく、今、長女にしてあげられることを可能な限りしてあげる、ときには人の助けを借りながら、という姿勢であったと思います。
長女が第一志望に合格し、良い刺激を受けながら充実した中学校生活を始める姿を想像することで、自然に親として自分たちがしてあげられることを考えていたように思います。

最後に本人の思いの強さが重要でした。
長女が第一志望にしたのは模試で合格レベルに達していない学校でした。しかし、その学校には帰国子女を想定した英語の特別クラスが設置されているから、というのが長女がどうしてもその学校に行きたいと言った理由でした。私たちはそれを聞いた時、米国滞在中の経験が長女にとって大きな自負になっていることを理解し、たとえ他人から合格圏外と言われても、最後までその学校を目指すのだろうと思いました。つらい時期を乗り越えて、最後まで目標を変えず受験勉強を続けることができたのは、明確な理由があってその学校に行きたいと思っていたからだと思います。

本人の努力がなければ合格はなかったでしょうし、長女には自信を持って望んだ学校での中学校生活を始めてもらいたいと思っています。しかし塾や久保田先生、家族のサポート、そして幸運も含めて、何かが欠けていたら合格はなかったかもしれません。自分だけでなく、自分のことを大切に思ってくれる人たち皆が一生懸命頑張って、大きな目標は成し遂げられるのだということを今回の受験を通じて長女が学んでくれれば嬉しく思います。
そして幾つもの要素、多くの人の頑張りを合わせる際に、足りないところを本当にうまく調節して補ってくれたのが経験豊富な家庭教師の先生だったと思っています。だいぶ長く、また赤裸々すぎて恥ずかしい文章ですが、久保田先生に対する私達の感謝の気持ちを表すためには、私達が重要だったと思うことを素直に書く必要があるだろうとおもい、このような感想を述べさせて頂きました。子供の受験という一大事に臨むご家族、お子さんにとって、何かしらのお役に立てる内容であれば幸いです。
(以上、手記終了)



要職にあって多忙な日々の中、お父様がわざわざこのような記事をまとめてくださいました。
私自身も工夫したことも多かったですが、お父様お母様の様々なサポートが一番大きな支えであったのだということがよく分かりました。このようなご家庭から信頼を寄せていただけたことに感謝しています。
今や一学期の半ば、本人はどのような学校生活を送っているのでしょうか。
期待以上の学校であったことを祈るばかりです。

帰国生受験の体験記。(その2)

前回の記事の続きです。

以下、体験記の本文です。


上記(前回の記事で述べられた内容)の、受験問題を解けるようにするというテクニカルな点のほか、久保田先生のご指導で強く感じているのは精神的なサポートの的確さです。
親は子供の挑戦を心から応援しサポートしてあげたいと思っています。
しかし思いの強さはしばしば逆効果につながってしまいます。現状維持よりも少し上のレベルの学校に入れてあげたいと思うのが普通の親の心情でしょうから、多くのご家庭でお子さんに無理を強いてしまうのが受験勉強だと思います。
長女の場合は、久保田先生の指導と本人の真面目な性格のお陰で入塾直後は組分けテストの度にクラスが上がり、AクラスからBクラスへは順調に進みました。しかしここで大きな壁にぶつかります。何度も同じ問題を間違えたり、さらには受験勉強から逃避していると思われる様子がみられる様になりました。Cクラスに上がってもすぐにBクラスに降格するという事態が続きます。
壁を乗越えさせるために、現状維持以上の努力をさせなければならないという思いが親に出始めた時、きつい言葉が多くなります。おそらく親は自分と同じような分別のある成人を奮起させる場面をイメージしながら叱咤激励するのでしょうが、小学生の長女に伝わるはずがありません。気付けば長女はやる気を出すどころか完全に自信を失っていました。それがわかると親も自己嫌悪に陥り完全に負のスパイラルです。これが限界か、第一志望と考えていた学校は無理なのだろうかと考え始めます。
そんな時、久保田先生は冷静に正しい道を示してくれました。今の長女の学力は親が思っているほど悪くないこと、第一志望を諦める様な状況ではないこと、しかし努力して克服しなければならない弱点があることを淡々と、その根拠とともに解説して下さいました。
「大丈夫。」
だけでなく、「がんばらないとダメです。」というアドバイスには、いつもの説得力があります。
長女に対しても自信をもたせながら努力も促すという指導を、後半はして下さっていたと思います。
受験直前の窮地で、長女と私達両親が間違った方向に進まずに済んだのは、ここでも経験に裏付けされた久保田先生の的確なサポートがあった御陰であったと感じています。
(次回に続く)



身に余る言葉の連続で、引用するのも気が引ける気もするのですが、敢えてお父様の本音としてそのままに引用させていただきました。
真面目で、とても熱心に問題に取り組む姿を目の当たりにしてきたので、このお子さんの受験を何とかハッピーエンドにしたいというのが私の率直な気持ちでした。
1月の帰国生入試で不運な結果となりました。これについて、本人は英語と算数ができなかったことが原因と分析していたようですが、実は、受験校の先生に無理を申し上げてお聞きしたところ、「英語も算数もそれほど悪くなかった。失点が多かったのは国語だった」ということでしたので、敢えてそのことをご両親にもお伝えしました。
そのことで本人が再挑戦する気持ちになった様です。
私もそれを聞き、敢えて厳しく指導することとし、兎に角、「勝てる」受験生にしたいということを意識しました。
繊細な性格のお嬢さんの側面と、辛抱強く努力できるという側面とを併せ持つこの子を見て、暖かく見守ることと、厳しく突き放すことのギリギリの境界線を模索しながら指導していたように思います。
一度は涙まで見てしまいました。
やり過ぎたかと気にしつつ1週間を過ごしましたが、次の授業では、見違えるほどの逞しさで課題に取り組んでくれていて、正直、私自身が一番ホッとしました。
今思い返せば、このように半ば自慢げにすら語れますが、当時は本当に、私自身も必死で、判断力すら鈍っている部分もあったかもしれません。
でも、やはり、2年掛けて作った、私とこの受験生との絆は強かったのだと思います。
ひょっとしたら、以心伝心ということすら働いたのかもしれません。
真面目にひたすら私の言うことに徹する彼女の姿を見ていると、私自身も心底から嬉しくなりました。
こうしたお子さんとの出会いは、私にとっても貴重な天恵と言えるのかもしれませんね。

ご両親もそれを感じ取ってくださっていた様に思い、この手記を、実はとても嬉しく読ませていただきました。

改めて、私からも感謝を申し上げたいと思います。

帰国生受験の体験記。(その1)

今春第一志望校に進学されたご家庭から、受験体験記をいただきました。
これから受験される方への参考のため、また私の指導の様子を知っていただく為の資料として、何回かに分けて公開させていただきます。
保護者の方からは許可を得ています。

以下、体験記の本文です。


「両親では支えることのできない部分を久保田先生が支えてくれました」

長女は今年の春、無事第一志望に合格することができました。久保田先生の指導がなければおそらく無理だったのではないかと思います。
なかでも
(1)第一志望に合格するレベルまで子供の学力をあげるテクニックをお持ちであること、
(2)受験勉強という長期戦の要所要所で必要となるサポートを心得ていらっしゃること、
この二点が、久保田先生のご指導が長女を合格させてくれた大きな要因だったのではないかと思います。

5年生の4月に、米国から帰国したときから長女の受験勉強は始まりました。
渡米前から公文や受験参考書「自由自在」で受験勉強の準備を始めていたことに加え、数学が得意で授業態度も真面目な日本人であったことから、現地の小学校では優等生として先生やクラスメートから長女は高い評価を得ていました。

しかし帰国後に受けた入塾テストで棘の道が始まります。

SAPIXからは入塾のレベルに達していないとされ門前払いを受け、四谷大塚でも入塾の基準を満たさないという判定でした。
しかし帰国直後という不利な状況を加味し、今後の向上を期待して四谷大塚に受け入れてもらえる事になりました。

渡米数日後に英語もほとんど話せない状況で、クラスでたった一人の日本人として現地の3年生に編入した長女でしたが、勉強や体育ができたことから1ヶ月後にはクラスの人気者になっていました。
その後は現地校で特別扱いされることなく授業を受け、満足のゆく成績を残して1年半後に帰国したのですが、同じ時期に日本で受験勉強をスタートさせていた同級生に比べて、果たして長女の能力はいくつもの塾から門前払いを受けるほど低かったのでしょうか。
その事を、長女と何度も話すようにしました。確かに受験勉強のテクニックを身につけるという意味では、長女は大きく出遅れていたのでしょう。しかし長女が米国で子供ながらに受けた試練を乗り越える過程で身につけてきたものは、日本の受験勉強で同級生たちが既に身につけたものに比べて劣るものであるはずがない、それは2年後の受験の結果に反映されるものなんだと、何度も話しました。こうして長女が自信を失わないよう、両親は長女にとって信頼できる支えになろうと心がけることを意識し、最後尾からの受験勉強が始まりました。

実際に四谷大塚の授業が始まると、教材の内容や受験への心構えに関するアドバイスなど、蓄積されたノウハウに基づく指導のうまさに感心しました。
しかし多数の生徒を相手にする塾の授業は、一人ひとりの弱点に合わせてケアしてくれるものではありません。
それに気付いた妻が探し当てたのが久保田先生でした。

「予習シリーズ」を例にすると、はじめは宿題として出された課題もわからないまま過ぎてしまうことが多く、やはり塾の想定するレベルに達していないのかなと思うことも多かったのですが、久保田先生から「同じ練習問題の中には超一流校相当の問題も含まれている。御三家レベルを本命にしないのであれば練習問題のなかでも省いて良い問題がある」という指摘を頂き、納得しました。
こんなことは久保田先生に助言されなければ知る由もないことでした。
算数の解き方に関しても、塾で教わる解き方の他、面積図を多く活用することで濃度や比率に関するほとんどの問題が解けるようになることを教えてくれました。
塾の教えに画一的に従わせようと、理解できないものを強制的に覚えさせるのは子供にとっては大きなストレスとなります。久保田先生が長女にあった柔軟な解き方を教えてくれたことは、受験当日までくじけずに勉強を継続することができたことの大きな要因だったと思います。
以上は最近の塾の授業や受験問題のトレンドを継続して把握され、様々な志望校を目指すお子さんを指導されてきた豊富な経験に裏打ちされた久保田先生ならではのご指導だったと思っています。
(次回に続く)



長文ですので今回はまずここまでを引用させていただきました。
以下は私からの補足です。

在米中は優等生であったということはお聞きしていませんでした。
利発なお子さんとは感じましたが、自分で納得するまで先へ進もうとせず、集団塾の指導では未消化の部分が多いだろうと推察しました。
こういうお子さんこそ家庭教師や個別指導で伸びます。
でも、無理矢理に成績を伸ばすことは意図しませんでした。
まず一問一問の解き方をマスターさせ、その過程を通して、基本となる方法を身に付けさせようとしました。
実際、一回覚えた解き方、例えば面積図と逆比の利用とか、ダイヤグラムの使い方とか、そうした方法を新しい問題で自分から使おうとしてくれました。
初めはかなり時間も掛かりますが、自分で進もうとしている限り黙って見守りました。
これが良かったと思います。
基本となるツールを身に付けるには何回も使い、失敗し、修整していくことです。
何回も自発的に使っていて、間違いを修整してもらったり、詰まってしまった先への進み方を指導してもらえれば、各種ツールの使い方もうまくなります。速度も増します。
ジッと問題やノートに見入り、考え続けているこのお子さんの横顔は今でもよみがえってきます。
単に私のノートを写すのではなく、自分でノートに解法をまとめていきました。
このお子さんの第一志望校は、解き方も書かせる学校でしたので、これが効いたと思います。
勿論、答えだけ記入する学校の入試への準備としても、考え方も整理してマスターしていくという点で有効なのは当然ですが。
6年の1学期が終わるまでの学習では、こうした点が最も大事だと思います。
そこをチェックできるのは、やはりプロの先生だと思います。

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昨年度の指導を振り返って。(家庭教師の効果)

今年中学受験した私の生徒たちは、早い子は小学5年の4月からの指導。一番遅くの指導開始は小学6年の10月からでした。
手前味噌になりますが、合格の結果は、指導期間が長かったお子さんの方が希望に近いものとなりました。

今年一番驚いたのは、帰国生受験を目指し、5年生の4月から見たお子さんです。
何に驚いたかは、最後にお伝えしましょう。
今回は、この子のことを話させていただきます。

長くなりますが、初めて頂いたご相談のメールから抜粋させていただきます。
お子さんが5年になったばかりの時期のご連絡です。

「5年生になる娘の個別指導について調べている中で、ホームページに辿り着き指導内容に惹かれたので御連絡しました。
中学受験を考えているため、この春期講習から○○塾(大手塾)に通い始めたのですが、もともと算数が苦手で問題を読んでも解き方が浮かばず、解説を聞いて分かった気にはなるようですが次に同じ問題でつまずいてしまっている状況です。
公文は中学生のレベルまで進みましたが、この3月まで1年半アメリカに父親の仕事の関係で行っていたこともあり、日本の学校の授業を受けていないというのも一つの大きな要因かと思います。
夫が中学受験の経験もあり教える事はできても、算数の苦手意識も強く、本人が試行錯誤して考えていこうと思う方向に向かっていないのが気になっています。
○○塾に通っているという事でそちらの教材を使っていただければ一番だと思うのですが、その前に基礎的な事から抜けている事も多いと思います。
ですので必ずしも○○塾の授業に対応してでなくてもいいのかもしれません。

現在の先生のスケジュールの空き状況から、家庭教師をお願いできるか分かりませんが、可能でしたら一度体験授業をお願いいたします。」

体験授業に伺ったのは4月の中旬でした。
塾のテキストを使って、最近塾で習ったことを一緒に学習してみました。
すると、ゆっくり説明していけばしっかりと説明の内容を理解できるということが分かりました。計算の力も充分でした。
体験授業の後に、次のようなご返事をいただきました。

「体験授業、ありがとうございました。
先生が帰られた後『この問題どうしてこうなるか分かる?』と自分からメモを見ながら説明してくれました。
算数の問題に対して、あのような良い表情で話してくるのは本当に久しぶりでした。どうしてそうなるのか自分でも納得がいって嬉しかったのだと思います。
 成績の向上はもちろんなのですが、このような分かった時の面白さ、楽しさを少しでも感じながら勉強していく事も大切にしたいので、引き続き指導をお願いします。」

帰国して間もないということもあったのでしょう、通っている塾での成績は良くありませんでした。特に算数は、塾の授業はほとんど定着していないという状態でした。
体験授業をしてみて感じたのは、とてもペースがゆっくりだということでした。書くこと自体だけの話しではなく、理解するペースについてもです。
しかし、きちんと話しを聞く姿勢は出来ていました。つまり、納得するまで先に進まないということです。
多分、塾の授業は、先生の説明のペースが速すぎて、この子が理解し終わらないうちにどんどん先に進んでしまっていたのでしょう。
ひとつひとつの内容についての理解力に心配はありませんでしたが、かみしめるように話しを聞いていくのです。
「今の説明、分かったかな?」と尋ねると、
分かった時はすぐに「はい」と答えてくれるのですが、分からなかった時は黙って首を傾げています。
「まだピンと来ない?」と尋ねると、「はい、まだちょっとよく分かりません。」と答えてくれます。
そこで、もう一度、少し表現などを変えながら説明をします。
しばらく考え、やっと理解できると、パッと表情が明るくなります。実に分かりやすい子です。よく、素直な子が伸びると言われますが、まさにこの子は素直そのものでした。
そして、一旦理解できると、今度は自分で考えながらノートをまとめていきます。ほとんど私が説明した通りの流れなのですが、単に私のノートを写すのではなく、考え考え自分で式や図をまとめていくのです。
分からなくなると時々私のノートを見て確認したりもしながら、それでも自力でノートをまとめていくのです。
この子はきっと伸びるなと直感しました。
とは言え、書くのも遅かったので、塾のテストの成績は、私が指導した途端にグンと上がったという訳ではありませんでした。
それでも、クラスが上がれば素直に喜び、でも一段と指導のペースが速まったことに驚き、そしてまたクラスが下がったり。そんな繰り返しで小学5年の学習を進めました。
使ったのは通う塾の教材だけです。

5年の終わり頃でしょうか、お母様から、「あまり都内の中学の事は分からないので、先生がお薦めの学校ありますか?」とお尋ねがありました。
「今は借家なので、良い学校があれば引っ越しても構わないと思っています。遠くの学校でも良いと思う学校があれば教えてください。」と言われました。
そこで、思いつくまま、都内及び近県から5~6校の名前を挙げました。

その中の1つが第一志望となりました。
帰国生入試が一般入試とは別に設定されているというのも魅力だったのかも知れませんが、学校説明会に行った上で決めたということで、雰囲気や指導方針や先生方の様子なども気に入られたのだと思います。
ただし、6年生になってから受けた模試の結果では、その中学の帰国生入試の合格ラインにも届いていませんでした。一般入試の合格可能性はもっと低いものでした。

その子は、塾での授業のペースに付いていけないということが問題だと思ったので、ひたすら予習をしました。まず私と各単元を学習し、ポイントをつかんだ上で塾の授業を受けさせたのです。ですから、塾での先生の話も理解できるようになり、授業も苦痛ではなくなっていったのだと思います。
週末毎に行われる確認テストから、まだ理解しきれていなかった問題を洗い出し、翌週の指導の冒頭に説明しました。

夏休みも終わり、秋からは過去問演習に入りました。
塾の先生からは、まだ算数はやってはいけないと言われていたようですが、私は、過去問演習の目的は、問題の出題形式に慣れさせることと、どのような単元がどのように出題されるのかを実感させることと考えているので、その子のレベルに合わせながら、可能な限り早めに始めるようにしています。
この子は9月半ばになってからでしたが、昔、この生徒と同じ中学を第一志望にしていた子には、8月の冒頭に過去問演習を始めさせました。
合格ラインなど全く気にせず、どんどん進めさせました。
本人は点数を記入していたようですが、私は点数も見ませんでした。
何が苦手か、何が得意か、どの問題をどのように解いているか、それだけをチェックしていきました。

続けていくうちに、その中学の出題レベルでは、図形問題が得意な反面、速さに苦手意識があるのがつかめてきました。
でも塾の教材以外の宿題などは出しませんでした。なぜなら、過去問演習を続けていけば、前に解けなかったような問題がまた出てくるからです。
間違えた問題の解き直し、ただそれだけを課題にしました。塾からもかなりの宿題が出ているようだったので、それで充分だと判断しました。

結果としてこれが良かったのだと思います。
模試では合格ラインに届いていませんでしたが、無事第一志望のこの中学に合格しました。

では、この子について驚いたこととは何だったのでしょうか。

それは、帰国生入試では不合格だったのに、それより偏差値の高い、一般入試で見事合格したということです。
入試問題の算数のレベルは、帰国生入試より一般入試の方が高いです。それでも、一般入試では、2科で既に合格ラインをクリアしていました。一般入試も含め、きちんと過去問演習を続けてきた効果があったのでしょう。
また、帰国生入試から一般入試まで約2週間ありましたが、この間にも力を付けたのでしょう。これはやはり学校への思いの強さがあったからだと思います。

このお子さんは、家庭教師をつけたことが功を奏した一番の例だと思います。
家庭教師の効果は大きく二つあると言えます。

第一は、その子に必要なことがはっきりと分かり、最適のフォローができるということです。
塾の授業だけでは算数の点数が取れないというお子さんは、算数が苦手なのではなく、塾の先生の説明のスピードと、本人が理解していく速さのペースが噛み合っていないだけということが多いです。
そのことを見抜き、その子が一番理解しやすいペースで学習レベルを深化させていくことができるのは家庭教師ならではだと思います。
また、塾に通いながら、塾の勉強とは全く別に、基礎力を付けましょうと異なる問題集をやるのもあまり効果がないと思います。塾に通い続けるのであれば、塾の授業を効率よく受けられるようにするということが最優先だと思います。その中で、必要な基礎事項を補っていけば良いのです。

第二は、過去問演習を早くから始められ、木目の細かいフォローができるということです。この子が良い例ですが、過去問演習をきちんとやっておくと、模試の合格可能性を超えた受験が可能になるのです。誰でもこうなるという保証は出来ませんが、開成、桜蔭といった学校でも、6年秋以降の模試ではあまり高い合格率が出なかったお子さんも合格したこともありました。それは過去問演習を続け、解けなかった問題に必要な考え方や知識を確認し、定着させていったからです。
今回例に挙げさせていただいたお子さんは、ほぼ2年に及ぶ指導期間があったので、過去問演習に入ってからも、それまでの指導の延長でフォローできたので無理なく進めることができたと思います。
また、苦手だと思っていた平面図形が、志望校のレベルであれば充分に対応できるということが分かったのもとても良かったです。こうしたことは長く指導していたからこそ言えることです。

個別指導塾や家庭教師さえ付ければそれで何でもオッケーということは言えませんが、より効率よく学習を進められるようになるのは確かです。
ただし、そこで何をフォローしてもらうのか、それは親がきちんと確認しなければいけません。この記事が、その為の参考になれば幸いです。

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日常生活と算数。

駒場東邦中学の今年の算数に、面白い問題が出ていたというのが話題になっているようです。
私もこのブログで触れました。

問題は次のような内容です。
「今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい。」

どんな答えがあったのでしょう。見てみたいですね。
私はこの問題を見た途端にピザを思い出してしまいました。

ピザの注文で、Lサイズは直径30cm、Mサイズは直径20cm。値段はLがMの2倍。
だったらMを二つ頼んだ方がお得だねと言った人がいました。
これは本当の話です。
私は算数の勉強を教えている身ですので、即座に、いや、ピザの大きさは面積で考えないとダメだと分かりました。
面積の比は(3×3):(2×2)=9:4です。
明らかにLはMの2倍を超える量のはずです。
だから、値段が2倍なら、やはりLを1つの方が得です。

こんな体験をした子どもがいたとしたら、次のような答えを書いたかもしれませんね。

ピザのカタログを見るとLとMのサイズがあり、それぞれ直径が書かれていました。30cmと20cmだったと思います。値段はLがMの2倍でした。それを見た母が、「だったらMを2枚頼んだ方が得ね」と言いました。僕は面積比で考えないとだめだから、「いや違うよ、面積の比は9:4だからLの量はMの2倍より多いよ、お母さん」と答えました。お店の人はお客さんがどう思うかと思ってチラシを作っているのかなと思ったら、とても面白いなと感じました。

ただし、これだと解答欄には収まりませんね。
では次のように書き直しましょうか。
「ピザのサイズにはLとMがあるが、大きさとしては直径で表記されている。本当は面積で比べないと量の比較にならないのにと感じた。お店の人は、お客さんが勘違いするようにわざとこのように書いているのだろうかと思ったら、面白いと感じた。」

あまり気の利いた答えではないかもしれませんが、質問にはきちんと答えていると思います。

他にも小包を送るときの3辺の合計での値段設定などからも答えが作れると思います。

2020年の大学入試改革に合わせての設問とも言われていますが、思考力や表現力以前に、日常生活をいかに能動的に生きているかということが影響していくのかもしれませんね。

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2017年の中学入試についての記事。(アエラ・2017年3月6日号)

今年の入試はかなり様変わりが激しいようです。
その一端を紹介している記事がありましたので、リンク先を載せておきます。

「新テスト」忌避か 大学附属校人気の理由(アエラ・2017年3月6日号より)

各中学とも模索しているようですね。

女子学院のことは先日書きましたが、桜蔭でも立体の切断が出たりしました。
学校も試行錯誤しているということでしょうか。

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女子学院ロス

駒場東邦中学の算数の大問1(4)が話題になっているようです。
問題は次のようなものです。
「今まで算数を学んできた中で、実生活において算数の考え方が活かされて感動したり、面白いと感じた出来事について簡潔に説明しなさい。」
これで5点前後がもらえたと思うと、駒場東邦で?
と、ちょっとショックです。
あるいは2020年からの、大学入試改革を見据えての出題かもしれませんが、これまでの過去問演習を必死にこなしてきた6年生にはある意味ショックな内容だったのではないでしょうか。

しかし、それより私にとってはもっと大きな衝撃がありました。
それは、今年の女子学院中学の算数の問題です。

難関校入試の場合、パターンあてはめでは対応できない問題、いわゆる試行錯誤的な問題が出るのが普通ですが、女子学院は、難関校の中では、パターンあてはめで対応できる問題がかなりの出題範囲を占めていた学校と言えます。
それでも速さにしても、水槽問題にしても、それなりに細かな条件をチェックをしていかないといけない解きづらい問題が少なくなかった学校です。他の学校に比べ、試験時間が短いということもあり、それなりの難問出題の学校と思われてきました。
2015年の6番などは、今年の桜蔭の立体切断などの問題よりも、よほど空間的な想像力を必要とし、かつ水槽問題の王道のパターンも知り尽くしていないといけないような真の良問の1つだと思えるものでした。
あの時間内で、他の問題を解いた上に、更にこれを解ききったという子は少なかったとは思いますが、学校の意気込みを感じるような問題と私は受け止めていました。
実際、その後の受験指導で、色々と考えさせてくれるとても面白い問題なので、女子学院志望者以外(男子も含む)にも単発で課題に出したりしていた問題でした。

そんな問題を出す学校ですから、第一志望としてきた子どもたちもかなりの難問に取り組んできたことと思います。
そうした子どもたちにとって、今年の女子学院の問題は唖然とするような内容だったと思います。
一言でいえば、簡単すぎるのです。
類型的な出題ばかりだったのです。
これも大学入試改革を踏まえ、標準的な問題をそつなくしっかりと素早く処理できるような子に入学して欲しいという、学校のメッセージの現れととらえるべきなのでしょうか。
今年の女子学院の算数の平均点はかなり高くなったと思います。
ひょっとすると、時間前に解き終わってしまって、何か読み違いがあったのではないかと不安になった子もいたのではないでしょうか。
いや、そういう子は皆、桜蔭を受けていた?
あながち冗談とは言えないかもしれません。
あるいは、子どもの質も変化してきているのでしょうか。
学校もそうした動きを察知して、より的確な明晰な子の選び方を模索しているのでしょうか。

つるかめ算のような基本中の基本といった出題が難関校の試験にも多くなったりといったことに象徴されるように、難関校の算数は、総じて解きやすいものに変わってきているようにも感じますが、それでも多くの学校の入試は、極端な難易度の変化はなかったように思います。
それだけに、女子学院の今年の算数は、私にとっては、まさにショックと言えるような易化ぶりでした。
来年の入試はどうなるのでしょうね。

ホワイトボード


駒場東邦中学の今年の入試問題四番は立体の切断でした。
解くのに、100均で買ったホワイトボードが役立ちました。本番でこれは使えませんが、普段の学習にはとても役立ちます。両面が使え、白紙と罫線つきが使い分けられます。
5色のマーカーも5本で100円ですからこれも是非一緒に買いましょう。
プロフィール

久保田塾・塾長

Author:久保田塾・塾長
東京都内、自宅にて個別指導、都内近県にて家庭教師をしています。
受験対策でも不登校児へのフォロー指導でも、私を頼る者全ての力になりたいと思っています。
でも、出来ない事は出来ないので、その時は、よりふさわしい先生をご紹介したり、次善の策がないかを模索したりします。
一番得意なのは中学受験の算数指導。「どんな問題でも解ける」という事より、「志望校に合格するにはどういう力を付ければ良いかを伝える」のが大事なのです。そのことを分かっていない保護者の方々、現役の塾講師、家庭教師の先生方があまりにも多い。
教育ネタが中心になると思いますが、趣味に走ったりもするかも。
前から興味のあったブログというのを始めて、ちょっとワクワクの「え~年のおっさん」です。
(2008年2月2日(先勝)・ブログ開始)

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