算数と数学

最近の授業で、4年生と6年生が全く同じ間違いをした。
2×2×2=6
という間違いだ。

算数の勉強は、言ってみれば、具体的な世界からどのように抽象的な世界に移行するかだと思う。
この過程にはいくつかの段差がある。一様に上り続ける変化ではない。

まず一つ目の段差。
りんごが2個とりんごが3個の絵があって、合わせて何個ですか?
というレベルから出発し
2+3=5
に移行する。

二つ目の段差。
2+3
から
2×3
への移行。

こうした段差を上る時にどこまできちんと移行できたかは案外と見過ごされているのかもしれない。
なぜなら教える側の大人にとっては「当たり前のことから当たり前のことへの」移行だからだ。
特に教えることに慣れていない一般の保護者からしたら、「何でこんなことが分からないの?!」という意識のもと、大きな段差があることにすら気付かないかもしれない。
だから2×2×2=6という式をノートにみつけると、天地がひっくり返ったかのように怒ったりがっかりしたりしてしまう場合もある。
ところが中学受験しようという意識の子ども
しかも5年生であったり6年生であったりしても日常的にこのような間違いをしてしまう子が現にいるわけだ。
子の性格やその時の精神状態ということもあるのかもしれないが、子どもだけの責任ではないとも思う。
しっかり身に付いたことはどのような状況でもほとんど間違えることはないからだ。
つまりしっかりと身に付けさせてもらえなかったということのような気がしてならない。
教える側が凄い段差なのだという意識をもって教えたかも影響しているような気がする。

段差はこの後もいくらもある。
2×3=6
の次は
2と3を比較したとき
差が1と感じることから
3は2の1.5倍と感じること
への移行だ。
ここら辺りになると、中学受験をする場合は
数量を線の長さに置き換えたり(いわゆる線分図)
量を面積に置き換えたり(いわゆる面積図)
という発想も伴って学ぶことになる。

教える側は凄い段差なのだと意識して
でも楽に越えられるような気持ちにさせながら学ばせる必要がある。
この「楽に越えられるような気持ち」というのがくせ者なのだ。

「こんなの簡単だよ、こういう風に決まってるんだからこのまま覚えれば良いんだよ」
で済ますか
「これにはこういう意味があるから、こんな考え方もできるんだね」
と得心させながら進むか。
この違いが大きい。

一つ一つの段差を、注意深く見守りながら確実に上らせること
これがプロの教え人
つまり教師、講師の仕事だと思う。

段差自体も一様でない場合もある。
でも特定のどこかが難しくて特定のどこかが易しいということでもない。
子の成長具合との兼ね合いで個人差が出るということだと思う。
小学校レベルの変化には比較的楽に付いていけていた子が中学から高校への移行でつまずいたり
その逆だったりもある。
つまり段差の大きさは一人一人の子どもにとっては何処が大きいのかが違ってくるということだ。

だからかなりの難度の文章題を平気で解ける子が、2×2×2=6とやってしまうのも、そう不自然なことでもないのだ。
その子にとって、+と×の違いは形式的にはつかめていたが、実質的な違いを実感できるまでの理解は為されていなかったということだけのことだから。
気が付いたらそこで修復すれば良いのだ。
それができるのが個別指導のメリットと思っている。

やはり相当なレベルの受験を目指して、それなりの学習をしてきていた子がとても基本的な問題で思わぬミスをしていたことがあった。
どう解いたかの説明を聞いてみたら、直方体と立方体という言葉の違いを明確に把握していなかったのだ。
習った時に、誰でもすぐ分かることだと思われ簡単に説明されて終わったからなのか、それとも本人がきちんと話を聞かずにそこの学習が過ぎてしまったのか、それは今言っても仕方ない、とにかく発見したら修復する。
だが教わった時にもう少ししっかりと学べていたらとは思う。
新しい概念を教える時にくどい説明をしろと言っているのではない。
例えば立方体という言葉と立方メートルあるいは立方数という言葉とのつながりを話してあげたら、「サイコロみたいな方が立方体」ということがより明確に意識されていたのではないかと思ったりしてしまうということだ。

この段差のつながりは紛れもなく階段のイメージだ。
その山場が算数から数学への移行だと思うが
中学受験の面倒くさい文章題を解くときなど、時々、幾何の証明問題になぞらえて
小学生にも仮定と結論という発想で説明することもある。
勿論そのままの用語をどの生徒にも使うわけではない。
子どもによっては、証拠と真犯人という言葉に置き換えたりもする。
だが、基本の考え方は全く同じだ。
数学の予習として説明するのではない。
この方が理解されやすいと感じるから使うだけのことだ。

大きな段差があると思われる算数と数学の間にすらこのような連関がみつけられるのだから、階段を上らせる時には、前後の段差も意識して何をつかませるのかをきちんと確認しながら学ばせるべきだと思う。
この気持ちで教える限り、りんご2個とりんご3個とが書かれた絵の問題と高校数学とは、長い一つの大きな階段の一部としてきっちりつながっていると実感できると思う。

テーマ : 塾講師のお仕事
ジャンル : 学校・教育

プロフィール

久保田塾・塾長

Author:久保田塾・塾長
東京都内、自宅にて個別指導、都内近県にて家庭教師をしています。
受験対策でも不登校児へのフォロー指導でも、私を頼る者全ての力になりたいと思っています。
でも、出来ない事は出来ないので、その時は、よりふさわしい先生をご紹介したり、次善の策がないかを模索したりします。
一番得意なのは中学受験の算数指導。「どんな問題でも解ける」という事より、「志望校に合格するにはどういう力を付ければ良いかを伝える」のが大事なのです。そのことを分かっていない保護者の方々、現役の塾講師、家庭教師の先生方があまりにも多い。
教育ネタが中心になると思いますが、趣味に走ったりもするかも。
前から興味のあったブログというのを始めて、ちょっとワクワクの「え~年のおっさん」です。
(2008年2月2日(先勝)・ブログ開始)

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